血圧の薬をお渡しするとき、私は、減塩や運動をするように伝えています。ただ、「それで血圧がどれぐらい下がるのか」を、具体的な数字で言えずにいました。
数字があれば、患者さんのモチベーションに、少しはつながるかもしれません。そこで、高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)と、そこで引用されている研究を確かめました。
この記事の結論
- 運動:高血圧の方を対象にした84の試験をまとめた解析で、運動をした群は、しなかった群より、収縮期血圧が7.5 mmHg低くなりました。この解析では、運動の種類による降圧効果の明確な違いは、確認されませんでした
- 減塩:高血圧の方が食塩を平均で1日4.4g減らした試験をまとめた解析で、収縮期血圧が5.4 mmHg低下しました。JSH2025の減塩の節(80〜81ページ、90〜91ページ)では、具体的な降圧幅を見つけられませんでした
- 減量:体重1kgあたり、収縮期血圧で約1 mmHgという推定があります。一方、高血圧の方の減量食を調べた別のレビューは、降圧効果の確実性を「低い」と評価しています
数字は、研究で比較した群の差をまとめた値や、そこから求めた推定値です。一人ひとりに同じ低下を約束するものではありません。
この記事に出てくる会話は、説明のために構成したものです。
治療で目指す血圧の数字は、「血圧はどれぐらいならいいですか」と聞かれたらにまとめています。
3つの数字を、先に表で
| 取り組み | 比較した群の差・推定値(収縮期/拡張期) | 対象と条件 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 運動 | 7.5/4.4 mmHg | 高血圧の方。84試験、5,065例。運動をした群と、しなかった群の差 | JSH2025 86ページ、出典の1 |
| 減塩 | 5.4/2.8 mmHg | 高血圧の方。4週間以上の減塩試験。食塩は平均で1日4.4gの減少 | 出典の2 |
| 減量 | 体重1kgあたり 1.1/0.9 mmHg(推定) | 25試験、4,874人。食事のエネルギー制限、運動、またはその両方。高血圧の方だけの結果かどうかは、確認できていません | JSH2025 82ページ、出典の4 |

3つは、別々の研究の結果です。対象の人も、取り組みの大きさも違います。足し算をしたり、どれがいちばん効くかを比べたりは、できません。
運動:歩く運動以外にも、降圧効果の報告がある

運動をすすめても、「膝が痛いから運動はできない」と言われることがあります。

JSH2025は、「筋力を使う運動は、歩くような運動と同等の降圧効果があるか」という問いを立てて、試験をまとめ直しています。JSH2025の答えは「同等の降圧効果を示す」で、推奨の強さは1、エビデンスの強さはAです(JSH2025 85ページ)。
まとめたのは、高血圧の方を対象にしたランダム化比較試験(くじ引きで2つの群に分けて比べる試験)84件、5,065例です。運動をした群は、しなかった群に比べて、収縮期血圧が7.52 mmHg、拡張期血圧が4.36 mmHg低くなりました(JSH2025 86ページ、出典の1)。
運動の種類ごとの、収縮期血圧の差は、次のとおりです。
- 有酸素運動(ウォーキングなど):7.85 mmHg
- 動きのある筋力運動(スクワットなど):6.44 mmHg
- 動かずに力を入れる運動(手のひらを胸の前で押し合う運動、プランクなど):6.27 mmHg
- 組み合わせた運動:7.64 mmHg
この解析では、運動の種類による降圧効果の明確な違いは、確認されませんでした(JSH2025 86〜87ページ)。どの運動でも同じだけ下がる、という意味ではありません。JSH2025は、患者さんの背景に合わせて、運動の種類を個別に選ぶ必要がある、としています。

歩く運動だけではないんですね。

そうです。ただ、運動には条件が書かれています。事前にメディカルチェックを行うこと。対象は、II度高血圧以下で、脳や心臓の病気のない方です。III度高血圧の方は、血圧を管理してから始めます(JSH2025 82ページ)。
この解析は、種類ごとの血圧の下がり方を比べたものです。膝の痛い方が安全にできる運動を調べたものではありません。運動を始めてよいか、どの運動がよいかは、主治医に確認していただくことになります。
JSH2025には、高齢というだけの理由で運動を制限すべきではない、とも書かれています(82ページ)。
減塩:下がる数字を、引用されている研究で確かめる

減塩では、どれぐらい下がるんですか?

JSH2025は、減塩による降圧は「証明されている」と書いています。減らす量が多いほど下がる、とも書いています(80ページ、90ページ)。ただ、減塩の節(80〜81ページ、90〜91ページ)では、何mmHg下がるかの数字を見つけられませんでした。数字は、引用されている研究などにあります。
確認できた数字を、出どころごとに並べます。
1. 高血圧の方を対象にした解析(出典の2)
4週間以上の減塩を調べたランダム化試験をまとめた、コクランレビューです。高血圧の方を対象にした試験では、ふだんの食塩は1日9.5g(中央値)で、そこから平均で4.4g減っています。収縮期血圧は5.39 mmHg(95%信頼区間 4.15〜6.62)、拡張期血圧は2.82 mmHg低下しました。試験の期間は、中央値で5週間です。
2. 133試験をまとめた解析(出典の3)
JSH2025が引用している解析で、12,197人をまとめています。高血圧でない方も含みます。減塩した群と、しなかった群とで、24時間の尿に出るナトリウムの差は、平均130 mmol(食塩相当量に換算すると約7.6g)でした。収縮期血圧は4.26 mmHg、拡張期血圧は2.07 mmHg低下しました。高齢の方や、もとの血圧が高い方で、下がり方が大きいと報告されています。
3. 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(出典の6)
「食塩摂取量を1g/日減らすと、収縮期血圧で約1 mmHg強の降圧が期待できる」と書かれています。

1日4.4g減らすのは、大変そうです。

小さい量ではありません。令和5年の国民健康・栄養調査で、日本人の食塩摂取量は、男性が1日10.7g、女性が9.1gです(JSH2025 91ページ)。JSH2025の目標は、1日6g未満です。
1gあたりでどれぐらい下がるかは、資料や条件によって、推定が違います。上の2の解析で、年齢や試験の期間などを調整すると、ナトリウム50 mmol(食塩相当量に換算すると約2.9g)の減少あたり、収縮期血圧で1.10 mmHgの低下でした。1つの数字を、一律に使うことはできません。
減塩には、気をつける方もいます。フレイルの高齢の方や、慢性透析の方などは、6g未満にこだわらず調整することが望ましい、とされています(JSH2025 81ページ)。
減量:1kgあたり約1 mmHgという推定と、別のレビューの評価

体重は、どうですか?

JSH2025には、体重が1.0kg減るごとに、収縮期血圧が1.1 mmHg、拡張期血圧が0.9 mmHg低下すると推定されている、と書かれています(82ページ)。
もとの研究は、25のランダム化比較試験、4,874人をまとめた解析です。食事のエネルギー制限、運動、またはその両方で、体重が平均5.1kg減り、収縮期血圧が4.44 mmHg、拡張期血圧が3.57 mmHg低下しました。同じ解析は、1kgあたりの推定値(収縮期1.05 mmHg、拡張期0.92 mmHg)も報告しています(出典の4)。
日本人の肥満の方では、3%以上の減量で、有意な降圧を認める、とも書かれています(JSH2025 82ページ)。体重80kgの方なら、2.4kgにあたります。

1kgで約1 mmHgなら、伝えやすいです。

伝えやすい数字ですが、別のレビューも見ておきます。高血圧の方の減量食を、24週間以上続けた試験で調べたコクランレビューです。収縮期血圧4.5 mmHg、拡張期血圧3.2 mmHgの低下を報告したうえで、この結果の確実性を「低い」と評価しました。血圧の解析に入ったのは、3試験、731人です。効果の大きさは、参加者と試験の数が少ないため不確かだ、と結論しています(出典の5)。
これは、1kgあたりの推定そのものへの評価ではありません。別の解析の評価です。
JSH2025も、食事療法による体重の減少と降圧効果は一時的であること、方法や続け方に注意が必要なことを書いています(82ページ)。
数字を伝えるときに、気をつけたいこと
数字だけが、ひとり歩きしないように
- 数字は、研究で比較した群の差をまとめた値や、推定値です。「あなたも、これだけ下がります」とは言えません
- 別々の研究の数字は、足し算できません
- 減塩と減量の数字は、「食塩を平均4.4g」「体重を平均5.1kg」など、減った量とセットです
- 生活習慣の改善は、降圧薬を始めたあとも重要だ、とJSH2025に書かれています(80ページ)。薬をやめる理由にはなりません
私の場合
資料に書いてあることと分けて、私自身のことを書きます。
減塩で伝えているのは、「ラーメンの汁を飲み干さない」「漬物を控える」ぐらいです。
運動は、「膝が痛いからできない」と言われた方には、椅子に座ってできる「ながら運動」をすすめています。できる方には、インターバル歩行をすすめています。
これは、私のやり方です。この記事で紹介した数字は、この2つの運動を個別に調べた数字ではありません。
患者さんから「どれぐらい下がるの」と聞かれたことは、まだありません。それでも、効果を具体的に言えればいいなと思って、今回の数字を確かめました。
まとめ
明日の窓口で使えること
- 運動:高血圧の方の84試験をまとめた解析で、運動をした群は、しなかった群より収縮期血圧が7.5 mmHg低かった。歩く運動以外にも、降圧効果の報告がある。始める前に、主治医への確認が要る
- 減塩:高血圧の方が食塩を平均で1日4.4g減らした試験の解析で、収縮期血圧が5.4 mmHg低下。1gあたりの下がり方は、資料や条件で違う
- 減量:体重1kgあたり、収縮期血圧で約1 mmHgという推定がある。別のレビューは、減量食の降圧効果の確実性を「低い」としている
- どれも、一人ひとりに同じ低下を約束する数字ではない。足し算はしない。薬をやめる理由にはならない
出典
情報を確認した日:2026年10月11日
ガイドライン
日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)。2025年8月29日発行。学会が公開している全文で、次のページを確認しました。2026年3月31日付の正誤表に、これらのページの訂正はありません。
- 食塩制限:80〜81ページ、Q3(90〜91ページ)
- 適正体重の維持、運動:82〜83ページ
- CQ6(レジスタンス運動):85〜87ページ
全文の公開先は、学会の高血圧管理・治療ガイドライン2025の案内ページにあります。
論文と公的な資料
- Morita H, et al. Hypertens Res. 2025;48:733-743. PMID: 39609644。DOI: 10.1038/s41440-024-01998-9。JSH2025の文献450。要旨のみ確認
- He FJ, et al. BMJ. 2013;346:f1325. PMID: 23558162。DOI: 10.1136/bmj.f1325。本文の結果と考察を確認
- Huang L, et al. BMJ. 2020;368:m315. PMID: 32094151。DOI: 10.1136/bmj.m315。JSH2025の文献389。本文の方法、結果、考察を確認
- Neter JE, et al. Hypertension. 2003;42:878-884. PMID: 12975389。DOI: 10.1161/01.HYP.0000094221.86888.AE。JSH2025の文献433。要旨のみ確認
- Semlitsch T, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021;2:CD008274. PMID: 33555049。DOI: 10.1002/14651858.CD008274.pub4。JSH2025の文献348。要旨のみ確認
- 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 高血圧の章、406ページ
論文は、PubMedの記録に、撤回や訂正の表示がないことを確認しました。
確認したのは、上に挙げたページと論文です。ガイドラインの全部を読んだわけではありません。「要旨のみ確認」の論文は、本文を読んでいません。表は、ガイドラインの図表をそのまま写したものではなく、数字を整理し直したものです。
更新の記録
- 2026年10月:JSH2025にもとづいて作成
お読みいただくにあたって
この記事は運営者が調べてまとめたものです。実際の業務で判断される際は、必ずガイドライン本体でご確認ください。
誤りを見つけられた場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。すぐに訂正いたします。


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