血圧の薬をお渡しするとき、「どうして血圧が高くなるの」と、よく聞かれます。聞かれるのは、寒くなってきた時や、診察時に高かった時です。血圧の薬を飲んでいても下がらない時にも、聞かれます。
私は、自分の言葉で答えています。その答えにあたることが、高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)にどう書かれているかを、確かめました。
この記事の結論
- 寒い時期:JSH2025には、冬に血圧が上がることが「知られている」と書かれています。寒い部屋で測ると血圧が上がる、とも書かれています。測った部屋の温度も確かめます
- 診察の前に高かった時:どのくらい休んでから測ったかを確かめます。腕を入れて測る自動の血圧計(自動巻き付け式血圧計)の測り方には「1〜2分安静にする」、診察室血圧の測定条件には「数分の安静後」と書かれています
- 診察室と家庭で値が違う時:一度高かっただけでは、分類は決まりません。家庭での記録と、治療を受けているかどうかを踏まえて考えます
血圧が上がるしくみと、測る前の深呼吸については、今回読んだページでは記載を見つけられず、確かめていません。
この記事に出てくる会話は、説明のために構成したものです。
高血圧と診断する数字、治療で目指す数字、家庭血圧の測り方は、「血圧はどれぐらいならいいですか」と聞かれたらにまとめています。
寒くなってきた時

寒くなってきた時に、「どうして血圧が高くなるの」と聞かれます。

JSH2025には、寒さにともなって、冬に血圧が上がることが「知られている」と書かれています。外の気温も、室内の温度も、低くなることは血圧の上昇に「関連する」とされています。冬は、血圧の変動も大きくなります(84ページ)。
家庭血圧を長く測っていると、季節による変動も分かります。冬に上がり、夏に下がります(49ページ)。

家庭血圧にも、季節による変化があるんですね。測る部屋の温度も、関係しますか?

関係します。JSH2025は、家庭血圧を測る場所を「静かで適温の室内」としています。その注に、とくに冬、寒い部屋で測ると血圧が上がる、と書かれています(33ページ)。
寒い時期の高い値には、季節の変動と、測った部屋の寒さの、両方がかかわっている可能性があります。
室温と血圧を調べた、国内の調査
JSH2025が引用している国内の調査を、1つ紹介します(出典の1)。冬の2週間、朝と晩の家庭血圧と、室温を測ったデータを使った観察研究です。解析の対象は、約2,900人でした。
解析では、調査の平均年齢にあたる57歳の場合、室温が10℃低いと、朝の収縮期血圧が8.2 mmHg高い、という関連が示されました。晩は6.5 mmHgです。高齢の方と女性は、室温の影響を受けやすかった、と報告されています。
この数字には、条件があります。
- 室温と血圧を観察して、関連を調べた研究です。部屋を寒くして、血圧が上がることを確かめた試験ではありません
- 朝の血圧と室温の関係は、温度帯によって異なっていました。10℃の数字を、1℃あたりに割って使うことはできません
- 対象は、家の断熱の改修を予定していた世帯の方です
- 確認したのは、論文の要旨だけです
室温を上げれば、一人ひとりの血圧がこの数字どおりに下がる、という意味ではありません。
今回、しくみの説明までは確かめていません
寒いと血圧が上がるしくみは、今回読んだページ(33、49、84ページ)では、説明を見つけられませんでした。49ページには、季節による変動に、日照時間や活動性などとの関連も考えられている、と書かれています。
お風呂と、脱衣所
JSH2025には、室内の温度が低いと、とくに高齢の方で、入浴後の血圧の上昇が大きいことが示されている、と書かれています。脱衣所の気温の調整などに注意する必要がある、とされています(84ページ)。
診察の前に測った血圧が高かった時

診察の前に測った血圧が高かった方からは、「急いで測ったから」と言われることがほとんどです。

まず、どのくらい休んでから測ったかを確かめます。JSH2025には、測る前の条件が書かれています。
腕を入れて測る自動の血圧計(自動巻き付け式血圧計)については、測り方が図で示されています(32ページ)。
- 椅子に腰掛けてリラックスし、1〜2分安静にする
- 測っている間は、腕や体を動かさず、会話をしない
- 前かがみにならない。前かがみになると、血圧が高く測定される
- 脚を組まず、両足を床につける
- 上着や厚手のシャツは、脱いでおく
診察室で測る場合の条件は、静かで適温の室内で、背もたれのある椅子に脚を組まずに座り、「数分の安静後」に測ることです。会話はしません。1〜2分の間隔をあけて、少なくとも2回測ります(42ページ)。
家庭血圧は、朝も晩も「座って1〜2分の安静後」です(33ページ)。
十分に休まずに測った場合は、どの条件にも合っていません。
診察室と家庭で、値が違う時

測る条件を整えたうえで、診察室と家庭の値が違う場合は、どう考えますか?

治療を受けていない方と、治療中の方で、分けて書かれています。
治療を受けていない方では、診察室で測った血圧は高血圧にあたり、診察室の外で測った血圧は高血圧でない状態を、「白衣高血圧」とよびます(46ページ)。診断の手順では、診察室血圧が140/90 mmHg以上で、家庭血圧が135/85 mmHg未満の場合です。診察室と家庭で診断が違うときは、家庭血圧での診断を優先します(47ページ)。

白衣高血圧なら、心配はいらないんですか?

そうは書かれていません。白衣高血圧は、診察室でも外でも高い高血圧に比べると、臓器の障害は軽く、予後もよいとする報告が多い、とされています。一方で、高血圧でない方に比べると、将来、脳や心臓の病気が起こるリスクが高いので、注意深いフォローが必要だ、とも書かれています(46〜47ページ)。
降圧薬で治療中の方については、別に書かれています。診察室の血圧が高く、診察室の外の血圧が高くない場合は、「白衣現象または白衣効果をともなう高血圧」とよばれます。診察室の血圧だけが目標に届いていない場合は、脳や心臓の病気のリスクにはならないとされていて、診察室の外の血圧を中心にした管理がすすめられています(47ページ)。診察室の外の血圧を確かめていることが、前提になります。
診察の前に一度高かった、というだけでは、どちらにあたるかは分かりません。測ったときの条件、家庭での記録、治療を受けているかどうかを確かめます。
なぜ診察の場面で高くなるのかは、今回、説明までは確かめていません。

薬を飲んでいても下がらない時
この場面は、理由が1つではありません。
JSH2025は、目標に届かないときの要因として、薬の選び方や使い方のほかに、血圧の測り方、生活習慣、薬の飲み方などを挙げています(166ページ)。薬がきちんと飲めているかの確認では、かかりつけ薬局との連携が求められています(165ページ)。
血圧に影響する薬として、痛み止め(NSAIDs)やカンゾウ(甘草)の名前も挙がっています(166ページ)。
答えるときに、気をつけたいこと
高い値を見たとき
- 1回の高い値だけで、原因を決めない
- JSH2025には、測った値によって、勝手に薬をやめたり、増やしたり減らしたりしてはならない、と書かれています(33ページ)
- 測った値に一喜一憂せず、長い期間測って、主治医の診断を受ける、とも書かれています(33ページ)
- 寒い時期は、測った部屋が寒くなかったかを聞いてみる
私の場合
資料に書いてあることと分けて、私自身のことを書きます。
寒くなってきた時は、「血管が縮こまっているから」と答えています。診察の前に測った血圧が高かった時は、「見えないプレッシャーがかかっているから」と答えています。
「急いで測ったから」と言われる方には、「深呼吸を3回程度して、落ち着いてから測るようにしましょう」と伝えています。
薬を飲んでいても下がらない時は、「薬の見直しが必要かも」と答えています。JSH2025には、薬のほかにも、確かめることが挙がっています。
どれも、私が実際に伝えている言葉です。今回読んだJSH2025のページでは、血圧が上がるしくみの説明と、深呼吸についての記載は、見つけられませんでした。しくみの説明が医学的に確かかどうかや、深呼吸が測った値にどう影響するかまでは、今回は確かめていません。
資料で確かめられたのは、測る前に安静にする時間と、測っている間は会話をしないことです。
まとめ
明日の窓口で使えること
- 寒い時期:冬に血圧が上がることは「知られている」。寒い部屋で測ると、血圧は上がる。脱衣所の気温にも注意が要る(JSH2025)
- 診察の前に高かった時:どのくらい休んでから測ったかを確かめる。自動巻き付け式血圧計の測り方(32ページ)には「1〜2分安静にする」、診察室血圧の測定条件(42ページ)には「数分の安静後」と書かれている
- 診察室と家庭で値が違う時:治療を受けていない方では、家庭血圧での診断を優先する。白衣高血圧は、心配がいらない、とは書かれていない。治療中の方は、診察室の外の血圧を中心に管理する
- 一度高かっただけで、分類や原因を決めない。薬を自分で増やしたり、やめたりしない
出典
情報を確認した日:2026年10月12日
ガイドライン
日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)。2025年8月29日発行。学会が公開している全文で、次のページを確認しました。2026年3月31日付の正誤表に、これらのページの訂正はありません。
- 自動巻き付け式血圧計の測り方:31〜32ページ
- 家庭血圧の測り方と注:33ページ
- 診察室血圧の測り方:42ページ
- 白衣高血圧、診断の手順:46〜47ページ
- 季節による変動:49ページ
- 寒さ:84ページ
- 目標に届かないときの要因:165〜166ページ
全文の公開先は、学会の高血圧管理・治療ガイドライン2025の案内ページにあります。
論文
- Umishio W, et al. Hypertension. 2019;74:756-766. PMID: 31446802。DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.119.12914。JSH2025の文献492。要旨のみ確認
論文は、PubMedの記録に、撤回や訂正の表示がないことを確認しました。
確認したのは、上に挙げたページと論文です。ガイドラインの全部を読んだわけではありません。「見つけられませんでした」と書いたことは、上のページの中での話です。「要旨のみ確認」の論文は、本文を読んでいません。箇条書きは、ガイドラインの図表をそのまま写したものではなく、自分の言葉でまとめ直したものです。
更新の記録
- 2026年10月:JSH2025にもとづいて作成
お読みいただくにあたって
この記事は運営者が調べてまとめたものです。実際の業務で判断される際は、必ずガイドライン本体でご確認ください。
誤りを見つけられた場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。すぐに訂正いたします。


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