血圧の薬が出ている患者さんに、私は「今日の診察前の血圧はどうでしたか?」と聞いています。その答えのなかで、「血圧は、どれぐらいならいいのか」と聞かれることがよくあります。
私は「診察室で130/80 mmHg未満、家庭で125/75 mmHg未満」と説明しています。一方で、患者さんから「歳だから、高くてもいいだろう」と言われることもあります。そこで、高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)を開いて、目標の数字を整理し直しました。
この記事の結論
- 治療で目指す数字は、原則として、診察室血圧130/80 mmHg未満、家庭血圧125/75 mmHg未満です。高血圧と診断する数字(診察室140/90 mmHg以上、家庭135/85 mmHg以上)とは、別のものです
- 「原則として」には、但し書きがあります。通院に介助が必要な方などは、目標が変わります。収縮期血圧が120 mmHg未満まで下がったときは、下がりすぎにも注意します
- 75歳以上でも、自力で外来通院できる方の目標は、130/80 mmHg未満です。年齢ではなく、健康や機能の状態で分けます
この記事に出てくる会話は、説明のために構成したものです。
「高血圧と診断する数字」と「治療で目指す数字」は、別のもの

「上が140を超えなければ大丈夫ですよね」と聞かれたら、どう答えればいいですか?

140/90は、診察室血圧で高血圧と診断する基準です。治療で目指す数字は、それより低い130/80未満です。JSH2025では、この2つが別の表に載っています。
2つの数字を並べると、次のようになります。
| 測り方 | 高血圧と診断する数字 | 治療で目指す数字 |
|---|---|---|
| 診察室血圧 | 140/90 mmHg以上 | 130/80 mmHg未満 |
| 家庭血圧 | 135/85 mmHg以上 | 125/75 mmHg未満 |

診断の数字は、収縮期(上)と拡張期(下)のどちらか一方でも当てはまれば、高血圧です。
高血圧の基準には当てはまらず、診察室血圧の収縮期が130〜139、または拡張期が80〜89の場合は、「高値血圧」という分類です。高血圧とは診断されませんが、目指す数字には届いていません。
収縮期と拡張期で分類が違うときは、高いほうの分類に入れる、と書かれています。たとえば150/85 mmHgは、収縮期が140以上なので、高値血圧ではなく高血圧です。
家庭血圧は、診察室血圧より5 mmHgずつ低い数字になっています。診察室と家庭で診断に差があるときは、家庭血圧による診断を優先する、と書かれています。
目指す数字は、2019年版からどう変わったか

75歳以上の方は、140/90未満が目標だと覚えていました。

それは、2019年版の目標です。JSH2025の降圧目標の表は、診察室130/80未満、家庭125/75未満の1つだけになりました。
2019年版では、次の3つの対象の目標が、診察室140/90 mmHg未満、家庭135/85 mmHg未満でした。
- 75歳以上の高齢者
- 脳血管障害で、両側の頸動脈の狭窄や脳の主幹動脈の閉塞がある方、または評価していない方
- 蛋白尿が陰性の慢性腎臓病(CKD)の方
JSH2025の本文には、「年齢・病態・合併症にかかわらず原則的に130/80 mmHg未満」を診察室血圧の降圧目標とする、と書かれています。

では、いまは全員が130/80未満なんですね。

そう言い切ることはできません。「原則的に」という言葉がついていて、本文や別の表に、但し書きがあるからです。
「原則として」の但し書き
個別に考える、と書かれている対象を表にします。
| 対象 | JSH2025に書いてあること |
|---|---|
| CKDで、蛋白尿がなく、糖尿病もない方 | 130/80 mmHg未満(原則、要個別対応)。140/90 mmHg未満を中間の目標として、慎重に130/80 mmHg未満まで進める |
| 脳梗塞(発症から2週間以降)で、両側の頸動脈に高度の狭窄がある方、脳の主幹動脈に閉塞がある方、血管を評価していない方 | 個々の症例に応じた対応が必要 |
| 左室駆出率の低下した心不全の方 | 一概に降圧目標値を定めることはできない |
| 75歳以上で、通院に介助が必要な方など | 次の章の説明のとおり |
糖尿病の方、蛋白尿のあるCKDの方、冠動脈疾患の方の目標は、130/80 mmHg未満です。
窓口では、蛋白尿の有無や、頸動脈の状態まで分からないことがあります。目の前の患者さんの目標を決めるのは、処方した先生です。薬剤師が伝えるのは原則の数字で、但し書きがあることを知ったうえで話します。
75歳以上の方は、年齢ではなく状態で分ける
JSH2025では、75歳以上の方の降圧の方針を、健康や機能の状態で4つに分けています。
- 自力で外来通院できる方は、130/80 mmHg未満が目標です。治療の方針は、ほかの年代と同じです
- 外来通院に介助が必要な方は、収縮期140 mmHg未満が目標です。130 mmHg未満にするかは、合併症などを踏まえて個別に判断します
- 外来通院が困難な方は、収縮期150 mmHg未満が目標です。収縮期120 mmHg未満への降圧は避けます
- エンド・オブ・ライフの方は、個別に判断します。目安は収縮期140〜160 mmHgで、降圧薬の段階的な減量・中止を考慮します
JSH2025の表10-4には、診察室血圧か家庭血圧かの区別は書かれていません。高齢の方については、家庭血圧を中心とした、診察室の外で測る血圧にもとづく診療がすすめられています。
健康や機能の状態が低下した65〜74歳の方も、この区分に準ずる、と書かれています。

「もう歳だから、少し高くてもいい」と言われたら、どう考えればいいですか?

JSH2025では、年齢だけで目標をゆるめてはいません。75歳以上でも、自力で外来通院できる方の目標は130/80 mmHg未満です。そのうえで、健康や機能の状態、合併症などを踏まえて、個別に考えます。

介助が必要な方は、目標がゆるくなるだけでなく、下がりすぎの目安もあるんですね。

そうです。通院に介助が必要な方と、通院が困難な方では、収縮期120 mmHg未満で降圧薬の減量を考慮する、と書かれています。
下がりすぎにも、目安がある
下がりすぎへの注意は、高齢の方だけの話ではありません。降圧目標のまとめには、収縮期血圧が120 mmHg未満に下がった場合は、下がりすぎによる有害事象の可能性に注意する、と書かれています。
降圧目標の表の注には、注意するものとして、次の例が挙がっています。
- めまい、ふらつき、立ちくらみ、倦怠感、失神などの症状をともなう低血圧
- 起立性低血圧
- 急性腎障害
- 高カリウム血症などの電解質の異常
低い数字を見たとき
血圧が低いことに気づいても、患者さんが自分の判断で薬をやめたり減らしたりしないよう伝えます。JSH2025の家庭血圧の表にも、測った値によって勝手に降圧薬の中止や増減をしてはならない、という注があります。気づいたことは、処方した先生に伝えます。
その数字は、どう測ったものか
目標の数字と比べる前に、その血圧がどう測られたものかを確かめます。JSH2025の家庭血圧の測り方は、次のとおりです。
- 血圧計は、上腕にカフを巻く形のものを使います
- 朝は、起きてから1時間以内に測ります。排尿のあと、朝の薬を飲む前、朝食の前です
- 晩は、寝る前に測ります
- 朝も晩も、座って1〜2分安静にしてから測ります
- 1回の機会に原則2回測り、その平均を使います
- 診断や薬の効果の判定には、朝と晩それぞれ、7日間(少なくとも5日間)の平均を使います
測る環境も書かれています。静かで適温の部屋で、背もたれのある椅子に脚を組まずに座ります。測る前と測っている間は、会話をしません。測る前の喫煙、飲酒、カフェインは避けます。
入浴のあとと飲酒のあとの値は低くなる、という注もあります。
私の場合
資料に書いてあることと分けて、私自身のことを書きます。
「血圧は、どれぐらいならいいのか」と聞かれたとき、私は、診察室で130/80 mmHg未満、家庭で125/75 mmHg未満、と説明しています。
困るのは、患者さんから「歳だから、高くてもいいだろう」と言われたときです。合併症の観点から説明しても、聞き入れてもらえない時があります。
めまいやふらつきを訴える高齢の患者さんに、出会ったことがあります。JSH2025の降圧目標の表の注には、注意するものとして、同じ症状が挙がっていました。
減塩や、体重を減らすこと、運動で、血圧がどれぐらい下がるのか。具体的な数字があれば、患者さんのモチベーションに少しはつながると思っています。これは、別の記事で確かめます。
まとめ
明日の窓口で使えること
- 高血圧と診断する数字は、診察室140/90 mmHg以上、家庭135/85 mmHg以上。治療で目指す数字は、原則として、診察室130/80 mmHg未満、家庭125/75 mmHg未満
- 「原則として」には但し書きがある。目の前の患者さんの目標を決めるのは、処方した先生
- 75歳以上の方は、年齢ではなく状態で4つに分ける。自力で外来通院できる方は、130/80 mmHg未満
- 収縮期120 mmHg未満は、下がりすぎに注意する目安。めまい、ふらつきなどの症状を聞く
- 家庭血圧は、朝と晩に測り、7日間(少なくとも5日間)の平均で見る
出典
日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)。2025年8月29日発行。学会が公開している全文で、次のページを確認しました。2026年3月31日付の正誤表に、この記事の数字にかかわる訂正はありません。
- 家庭血圧の測り方:表2-1(33ページ)、POINT 5a(41ページ)
- 血圧の分類と、高血圧の基準:表5-5(45ページ)、表5-6と本文(46ページ)
- 降圧目標:POINT 6c、表6-3、本文(68ページ)
- 脳血管障害、心疾患、CKD、糖尿病:POINT 9a(108ページ)、表9-2(114ページ)、表9-3(120ページ)、POINT 10a(139ページ)
- 75歳以上の高齢者:本文(150ページ)、表10-4(151ページ)
全文の公開先は、学会の高血圧管理・治療ガイドライン2025の案内ページにあります。
2019年版の目標は、高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)の表3-3(53ページ)で確認しました。
確認したのは、上に挙げたページです。ガイドラインの全部を読んだわけではありません。表は、ガイドラインの表をそのまま写したものではなく、数字を整理し直したものです。
更新の記録
- 2026年10月:JSH2025にもとづいて作成
お読みいただくにあたって
この記事は運営者が調べてまとめたものです。実際の業務で判断される際は、必ずガイドライン本体でご確認ください。
誤りを見つけられた場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。すぐに訂正いたします。


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