前に書いた「緑内障の目薬は入浴前に」の根拠をたどった記事で、宿題を1つ残しました。上まぶたのくぼみを相談されたら、薬剤師は何を知っておけばよいのか、です。
私自身は、上まぶたのくぼみについて相談を受けたことがありません。今回は、添付文書と研究を確かめて、分かったことをまとめます。
この記事の結論
- 上まぶたのくぼみを相談されたら、自己判断で点眼をやめないよう伝えて、処方した先生に相談してもらいます
- くぼみを気にする患者さん23人で、目薬をエイベリスに替えた研究があります。3か月後、16人でくぼみが改善したと判定されました。比べる相手のグループがない、小さな研究です
- エイベリスには、禁忌が3つあります。成分への過敏症の既往歴、無水晶体眼または眼内レンズ挿入眼、タフルプロストとの併用です。禁忌だけで使えるかどうかは決まらず、判断するのは処方した先生です
この記事に出てくる会話は、説明のために構成したものです。
くぼみは、どの目薬の添付文書に載っているか

上まぶたのくぼみは、添付文書にはどう書かれていますか?

「眼瞼溝深化」という名前で載っています。たとえばキサラタン(ラタノプロスト)の添付文書では、その他の副作用の「頻度不明」の欄にあります。
成分ごとの頻度を調べた研究は、前の記事で紹介しました。

エイベリスの添付文書にも、載っていますか?

エイベリスの添付文書には、眼瞼溝深化の記載がありません。眼瞼色素沈着と、睫毛の異常の記載もありません。
エイベリスの成分は、オミデネパグ イソプロピルです。添付文書の薬効分類名は「選択的EP2受容体作動薬」で、1日1回点眼します。
「記載がない」と「起こらない」は、別のことです
添付文書に記載がないことは、その副作用が起こらないことの証明ではありません。この記事では、「エイベリスの添付文書には記載がない」と書きます。
くぼみを気にする患者さんで、エイベリスに替えた研究
くぼみが出たあとに、目薬をエイベリスへ替えるとどうなるか。これを調べた日本の研究があります(Sakata 2021)。
- 対象は、FP受容体作動薬の目薬を使っていて、くぼみのために生活の質が下がったと訴えた緑内障の患者さん23人です
- 休薬の期間を置かずに、目薬をエイベリスの成分(オミデネパグ イソプロピル)へ替えました
- 替える前、1か月後、3か月後に写真を撮り、3人の観察者がそれぞれ、くぼみの変化を判定しました
結果は、次のとおりです。
| 時期 | くぼみが改善したと判定された人 | 平均眼圧 |
|---|---|---|
| 替える前 | — | 15.3 mmHg |
| 1か月後 | 23人のうち12人 | 15.6 mmHg |
| 3か月後 | 23人のうち16人 | 15.5 mmHg |

改善したと判定されなかった人も、くぼみの悪化はなかったと報告されています。平均眼圧には、統計的に有意な変化は認められませんでした。この結果は、すべての患者さんで眼圧が保たれることを保証するものではありません。

3か月後には、23人のうち16人で改善したんですね。

そうですね。ただ、この数字を、そのまま目の前の患者さんの改善の見込みとして伝えることはできません。比べる相手のグループがない、小さな研究だからです。
この研究を読むときの注意
- 比べる相手のグループがありません。替えなかった場合にどうなるかは、この研究からは分かりません
- 23人を3か月間みた結果です。もっと長い期間のことは、この研究からは分かりません
- 対象は、くぼみを気にして訴えた日本人の患者さんです。替える前に使っていた目薬の内訳は、抄録には書かれていません
- 著者9人のうち2人は、エイベリスの製造販売元の所属です
もう1つあります。この研究では、有害事象は観察されなかったと報告されています。これは、23人・3か月での結果です。エイベリスの添付文書には、次の章のとおり、禁忌と副作用が載っています。
エイベリスには、使えない方がいます

くぼみが気になる方には、エイベリスが合っていそうに見えます。

その前に、禁忌を見てください。エイベリスには、使えない方がいます。
エイベリスの禁忌(添付文書 2)
- 本剤の成分に対し、過敏症の既往歴のある方
- 無水晶体眼の方、または眼内レンズが入っている方
- タフルプロストを使っている方(タプロス点眼液、タプコム配合点眼液。併用禁忌)
眼内レンズが入っている方が禁忌になっている理由は、黄斑浮腫です。添付文書には、嚢胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫と、それに伴う視力低下や視力障害を起こすおそれがある、と書かれています。
重大な副作用の欄には、黄斑浮腫が5.2%と載っています。この数字には、「いずれも眼内レンズ挿入眼患者において認められた」という注記がついています。
タフルプロストとは、併用禁忌です。添付文書には、中等度以上の羞明や、虹彩炎などの眼の炎症が高頻度に認められている、と書かれています。
ここは分けて考えます。添付文書に書いてあるのは、タフルプロストとは併用できない、ということです。いま使っている目薬からの変更をどう行うかは、処方した先生が判断する別の問題です。自己判断で中止や切り替えはしません。
禁忌に当たらなければ使える、というわけでもありません。禁忌のほかに、添付文書で確かめておきたいことを表にします。
| 項目 | 添付文書に書いてあること |
|---|---|
| ほかの緑内障・高眼圧症の目薬 | 併用注意。チモロールとの併用で、結膜充血などの頻度が上がった。ほかの薬との併用経験はない |
| 結膜充血 | 22.8% |
| 点眼したあと | 一時的に霧視や羞明があらわれることがある。回復するまで、機械の操作や車の運転をしない |
| 視力低下などの異常 | 黄斑浮腫や虹彩炎があらわれることがある。すぐに受診するよう指導する |

禁忌の3つを先に確かめて、そのほかの注意も見るんですね。
相談されたら、薬剤師がすること
上まぶたのくぼみを相談されたら、自己判断で点眼をやめないよう伝えます。そのうえで、処方した先生に相談してもらいます。
薬を決めるのは、処方した先生です。薬剤師は、相談の内容と、先生の判断に役立つ情報をそろえて伝えます。
エイベリスの話をするなら、その前に、添付文書の禁忌3項目を確かめます。
- 成分に対する過敏症の既往歴がないか
- 無水晶体眼、または眼内レンズ挿入眼ではないか
- タフルプロストの目薬(タプロス、タプコム)を使っていないか

禁忌だけで、使えるかどうかは決まりません。ほかの注意事項も確かめたうえで、処方した先生が判断します。
先生に伝えるなら、こう言う
くぼみを相談されたら、私は、エイベリスの名前を出して先生に伝えます。伝え方の一例です。
「◯◯さんですが、点眼を始めてから上まぶたのくぼみが気になる、とのご相談がありました。白内障の手術歴はなく、タフルプロストの点眼もありません。エイベリスへの変更を調べた研究もありますが、この方の治療ではどう考えればよいでしょうか。」
これは説明のために作った例です。「点眼を始めてから」「白内障の手術歴はなく」「タフルプロストの点眼もありません」は、どれも実際に確認できた場合にだけ入れます。確認できていないことは、確認できていないと伝えます。
私の場合
資料に書いてあることと分けて、私自身のことを書きます。
上まぶたのくぼみについて、私は相談を受けたことがありません。エイベリスの処方は、薬局で受けたことがあります。
白内障の手術歴は、最初に書いていただくアンケートで分かります。日々の投薬のときに、手術をすることになった、手術をしてきた、というお話を聞いて分かることもあります。私の場合は、この2つで分かることがほとんどです。
くぼみを気にする患者さんで目薬を替えた研究があることを、私は知りませんでした。今回、知ることができてよかったと思っています。
まとめ
明日の窓口で使えること
- 上まぶたのくぼみは、添付文書では「眼瞼溝深化」。エイベリスの添付文書には、記載がない
- くぼみを気にする患者さん23人でエイベリスに替えた研究では、3か月後に16人で改善したと判定された。比べる相手のグループがない、小さな研究
- エイベリスの禁忌は3つ。成分への過敏症の既往歴、無水晶体眼または眼内レンズ挿入眼、タフルプロストとの併用。禁忌だけで使えるかどうかは決まらない
- 相談されたら、自己判断でやめないよう伝えて、処方した先生へ
出典
添付文書は、PMDAに掲載されている電子添文で確認しました。
- エイベリス点眼液0.002%/エイベリスミニ点眼液0.002% 2022年5月改訂(第4版) 2、6、8、10、11
- キサラタン点眼液0.005% 2024年7月改訂(第3版) 11.2
論文は、公開されている抄録の範囲で確認しました。本文は確認していません。
お読みいただくにあたって
この記事は運営者が調べてまとめたものです。実際の業務で判断される際は、必ず最新の添付文書でご確認ください。
誤りを見つけられた場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。すぐに訂正いたします。


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