「ジクアスLXは、コンタクトレンズをしたまま点眼していいですか」。患者さんから、こう聞かれました。この質問を受けたのは、今回が初めてです。
調べる前の私は、ベンザルコニウム塩化物が入っていそうだから、レンズは外したほうがよい、と考えていました。調べてみると、先発品にベンザルコニウム塩化物は入っていませんでした。これは意外でした。先発品と後発品で記載が違うことにも、驚きました。
この記事の結論
- 先発品(ジクアス点眼液3%、ジクアスLX点眼液3%)の添付文書には、コンタクトレンズについての記載がありません。記載がないことだけでは、つけたまま点眼してよいかどうかは判断できません。後発品(ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」)の添付文書には、ソフトコンタクトレンズは点眼前に外し、5〜10分以上あけてからつけ直す、と書かれています
- 先発品の2製品は、ベンザルコニウム塩化物を含みません。ただ、それだけで「防腐剤が入っていない点眼剤」とは判断できません。ジクアスLXの硝酸銀は、防腐剤として配合されていると公表されています。ジクアスには、クロルヘキシジングルコン酸塩液が入っています
- 製造販売元は、治療中はレンズの装用を中止するのが原則、としています。そのうえで、問題ないと考えられる患者さんでは、先発品は装用中の点眼が可能と考える、という見解です。カラーコンタクトレンズをつけたままの点眼は避ける、とされています
この記事に出てくる会話は、説明のために構成したものです。
添付文書の記載は、製品によって違う

ジクアスの添付文書には、コンタクトレンズのことはどう書かれていますか?

製品によって違います。成分はどれもジクアホソルナトリウムですが、添加剤と、「14.1 薬剤交付時の注意」の中身が違います。
| 製品 | 添加剤(一部) | コンタクトレンズの記載 |
|---|---|---|
| ジクアス点眼液3% | クロルヘキシジングルコン酸塩液 | なし |
| ジクアスLX点眼液3% | 硝酸銀、ポビドン | なし |
| ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」 | ベンザルコニウム塩化物 | あり |
「ニットー」の添付文書には、理由も書かれています。ベンザルコニウム塩化物は、ソフトコンタクトレンズに吸着されることがあるためです。ソフトコンタクトレンズをつけている場合は、点眼の前にレンズを外し、点眼後少なくとも5〜10分あけてからつけ直します。
PMDAの成分別の一覧に載っているジクアホソルナトリウムの点眼剤は、2026年10月12日の時点で、この3製品です。

同じ成分でも、製品が変わると、伝える内容が変わるんですね。

そうですね。一般名で処方されたときや、後発品に替わったときは、どの製品をお渡しするのかを先に確かめます。
先発品の添加剤は、2015年の改訂で変わっていた

ジクアスには、ベンザルコニウム塩化物が入っていると思っていました。

以前は入っていました。2015年7月改訂(第6版)の添付文書では、添加物にベンザルコニウム塩化物があります。「含水性ソフトコンタクトレンズ装用時の点眼は避けるよう指導すること」という注意も載っていました。
次の2015年9月改訂(第7版)には、「処方変更等」と書かれています。この版で、添加物がクロルヘキシジングルコン酸塩液に変わりました。ソフトコンタクトレンズの注意も、この版にはありません。
この2つの版は、PMDAに載っていた過去の添付文書の控えで確かめました。添加剤の変わった製品が、実際にいつから出回ったかまでは、確かめられていません。
「ベンザルコニウム塩化物なし」は、「防腐剤なし」ではない

ベンザルコニウム塩化物が入っていないなら、防腐剤が入っていない点眼剤、と考えてよいですか?

そこは分けて考えます。ジクアスとジクアスLXのインタビューフォームには、「添加剤にBAK(ベンザルコニウム塩化物)を含まない点眼剤である」と書かれています。書かれているのは「BAKを含まない」で、「防腐剤を含まない」ではありません。
ジクアスLXの硝酸銀については、PMDAの回収情報(2024年5月)に、「防腐剤として配合している硝酸銀」と書かれています。
ジクアスのクロルヘキシジングルコン酸塩液については、添付文書とインタビューフォームでは「添加剤」と書かれているだけです。配合の目的を書いた箇所は、今回読んだ製品の資料では見つけられませんでした。
日本コンタクトレンズ学会のガイドライン(第2版)には、点眼剤などに含まれる防腐剤がコンタクトレンズに取り込まれ、眼障害を起こすことが報告されている、という記載があります。この記載は、防腐剤の種類を分けていません。
製造販売元は、どう答えているか

添付文書に記載がない先発品は、レンズをつけたまま点眼してよい、ということですか?

添付文書に記載がないことと、つけたままでよいと確かめられていることは、別です。製造販売元の参天製薬は、医療関係者向けのQ&A(2025年8月)で、次のように答えています。
- コンタクトレンズの装用は、ドライアイの症状を起こすリスクを高める可能性があります。治療期間中は、装用を中止することが原則です
- レンズをつけたまま点眼治療を行っても問題ないと考えられる患者さんでは、ジクアスとジクアスLXは、ハードコンタクトレンズでも、使い捨てを含むソフトコンタクトレンズでも、装用中の点眼は可能と考える、とされています
- カラーコンタクトレンズへの影響は検討していないため、装用中の点眼は避ける、とされています
根拠として挙げられているのは、試験管の中での試験(in vitro)と、臨床での使用経験です。試験の数値は、Q&Aには載っていません。
同じ会社の、点眼剤全般についてのQ&A(2025年10月)には、装用中に点眼してよいかどうかを判断する基準は定められていない、と書かれています。製薬会社やレンズの販売会社によって、見解が異なる場合がある、とも書かれています。
コンタクトレンズを使う方での研究
関連する研究を4本確かめました。3本は、ソフトコンタクトレンズをつけたまま、ジクアスやジクアスLXを点眼した研究です。1本は、レンズを使う方を含む使用成績調査の解析です。
| 研究 | 対象と期間 | 報告されたこと |
|---|---|---|
| Nagahara 2015 | 健康な10人。レンズをつけて1回点眼し、60分後まで測定 | 涙の量の目安(涙液メニスカスの高さ)が、点眼前と比べて、60分後まで増えた |
| Itokawa 2025 | レンズ使用者23人。レンズをつけて1回点眼し、120分後まで測定 | 涙の量の目安が、点眼前と比べて、ジクアスで45分後、ジクアスLXで80分後まで増えた |
| Ogami 2021 | レンズに関連するドライアイの26人。装用中に点眼し、8週間評価 | 角膜と結膜の染色スコアが、点眼を始める前より改善した。点眼に関連する有害事象の報告はなかった(要旨のみ確認) |
| Yamaguchi 2015 | 使用成績調査の解析。965人のうち、レンズ使用者は64人。2か月 | レンズ使用者64人のうち、3人に副作用が報告された。レンズをつけたまま点眼したかどうかは、書かれていない |
Nagahara 2015 と Itokawa 2025 は、1回点眼したあとの涙の変化をみた研究です。安全性を調べた研究ではありません。
Yamaguchi 2015 では、レンズを使っていない901人のうち、44人に副作用が報告されています。著者は、レンズの使用に特有の副作用はなかった、と評価しています。人数の少ない観察研究の、一部を取り出した解析です。この数字から、安全性が同じだとまでは言えません。

レンズをつけたまま点眼した研究は、あるんですね。

あります。ただ、これらの研究だけで「つけたままでも心配ない」とまでは言えないと考えています。読むときの注意が、いくつかあります。
- Nagahara 2015 と Itokawa 2025 で使われたレンズは、それぞれ1種類です。Itokawa 2025 の著者は、レンズの素材によって結果が変わるかもしれない、と書いています。Itokawa 2025 は、生理食塩液や人工涙液とは比べていません
- Ogami 2021 は26人・8週間、Yamaguchi 2015 は2か月の結果です。もっと長い期間のことは、この2本からは分かりません
- Ogami 2021 と Yamaguchi 2015 は、製造販売元が費用を出しています。著者にも、製造販売元の社員が入っています
- Itokawa 2025 には、ジクアスLXがポビドンを含むことが書かれています。一方、それぞれの研究で使われた製品の防腐剤の種類は、今回読んだ範囲(3本は本文、Ogami 2021 は要旨)では確かめられませんでした。ジクアス点眼液3%の添加剤は2015年に変わっています。とくに2015年の研究を、いまの製品に当てはめるときは、注意が要ります
日本眼科学会の雑誌に載ったドライアイ診療ガイドライン(2019年)は、コンタクトレンズを使う方のドライアイに、人工涙液の使用を提案しています(CQ19。推奨の強さは「弱い」)。この推奨文に、ジクアホソルは入っていません。
硝酸銀とクロルヘキシジンは、眼とレンズに影響しないのか

ベンザルコニウム塩化物の代わりに入っている成分は、眼やレンズに影響しないのですか?

レンズをつけたまま点眼したときの影響を、この2つの成分について調べた研究は、今回の検索では見つけられませんでした。今回確かめた資料だけでは、いまの製品を装用中に点眼したときの、この2つの成分による眼やレンズへの影響は判断できません。分かったことを、成分ごとに書きます。
クロルヘキシジングルコン酸塩(ジクアス点眼液3%)
- ソフトコンタクトレンズに使われる素材(PHEMA)とクロルヘキシジンの相互作用を調べた実験で、グルコン酸塩は素材に取り込まれた、と報告されています(Plaut 1980)。装用中にジクアスを点眼した結果ではありません
- ウサギとネコの角膜の実験では、調べた濃度の範囲で、ベンザルコニウム塩化物より傷害が少なかったと報告されています(Burstein 1980)。著者は、人の眼に当てはめるには、さらに研究が必要としています。確かめた要旨に、コンタクトレンズを使った実験の記載はありません
硝酸銀(ジクアスLX点眼液3%)
- ウサギの角膜の電気抵抗(バリアのはたらきの指標)を調べた報告があります(Fukuda 2025)。ただ、要旨の中で、比べた群の製剤名と番号がそろっておらず、本文も確かめられていません。このため、ここでは、硝酸銀があるかないかでの違いの結論には使いません
- 硝酸銀がレンズに吸着するかどうかを調べた研究は、今回の検索では見つけられませんでした
- ジクアスLXの承認のもとになった試験は、期間中にコンタクトレンズが必要な方を、対象から外しています(Hori 2022)

製造販売元は、何をもとに「可能と考える」としているのですか?

Q&Aには、試験管の中での試験(in vitro)と、臨床での使用経験と書かれています。Q&Aが根拠に挙げている試験管の中での試験の、具体的な条件や数値は、今回確かめた公開資料では確かめられませんでした。
窓口で確かめること
ここまでの資料から、聞かれたときに確かめることを3つにまとめます。
- どの製品か。先発品(ジクアス、ジクアスLX)か、後発品(「ニットー」)か。後発品でソフトコンタクトレンズを使っている方には、添付文書のとおり、外して点眼し、5〜10分以上あけてつけ直すよう伝えます
- どんなレンズか。カラーコンタクトレンズは、製造販売元が、装用中の点眼を避けるとしています
- 眼科の先生から、レンズの使用について指示が出ているか。製造販売元は、治療中は装用を中止することが原則、としています。装用してよいかどうかを判断するのは、眼科の先生です

私の場合
資料に書いてあることと分けて、私自身のことを書きます。
ジクアスについて聞かれたら、これからは、まず、眼科の先生からコンタクトレンズについてどのような指示を受けているかを、患者さんにたずねるつもりです。指示を受けている場合は、その指示に沿って説明します。
何も指示を受けていない場合は、薬剤師として判断して説明します。そのときは、どの製品か、どんなレンズかを確かめます。後発品でソフトコンタクトレンズの方と、カラーコンタクトレンズの方には、外して点眼するよう伝えます。先発品で、カラーコンタクトレンズではない方には、製造販売元の考えを伝えます。レンズをつけたまま点眼治療を行っても問題ないと考えられる患者さんでは、装用中の点眼は可能と考える、というものです。そのうえで、ドライアイの治療としては、点眼のときにレンズを外すほうがよいと私は考えていることを話し、できるだけ外して点眼するようすすめます。つけたままの点眼に問題がないと判断した方には、外出先などで外せないときは、無理に外さなくてもよい、と説明します。
ここで私が判断するのは、点眼のときにレンズを外すかどうかです。治療中にレンズを使ってよいかどうかは、眼科の先生の判断です。
これは私の方針で、資料にこの言い方があるわけではありません。製造販売元は、治療中はレンズの装用を中止することが原則、としています。レンズを外して点眼したほうが治療の効果が高い、と結論できる根拠は、今回確かめた資料からは得られませんでした。長い期間つけたまま点眼を続けたときの安全性も、今回読んだ研究では確かめられませんでした。
まとめ
明日の窓口で使えること
- ジクアスとコンタクトレンズについて聞かれたら、まず、どの製品かを確かめる
- 後発品(「ニットー」)は、ベンザルコニウム塩化物を含む。ソフトコンタクトレンズは点眼前に外し、5〜10分以上あけてつけ直す(添付文書 14.1)
- 先発品(ジクアス、ジクアスLX)の添付文書には、コンタクトレンズの記載がない。記載がないことだけでは、つけたまま点眼してよいかどうかは判断できない
- 先発品はベンザルコニウム塩化物を含まない。ただ、それだけで「防腐剤なし」とは判断できない。ジクアスLXの硝酸銀は、防腐剤として配合されている
- 製造販売元は、治療中は装用の中止が原則としたうえで、問題ないと考えられる患者さんでは、先発品は装用中の点眼が可能と考える、としている。カラーコンタクトレンズをつけたままの点眼は避ける
- レンズをつけたまま点眼した研究は、3本確かめた。どれも小さく、期間が短い
出典
情報を確かめた日は、2026年10月12日と13日です。添付文書、製造販売元の資料、ガイドライン、コンタクトレンズを使う方での研究は12日に、添加剤についての研究は13日に確かめました。
添付文書は、PMDAに掲載されている電子添文で確かめました。
- ジクアス点眼液3% 2022年9月改訂(第1版) 3.1、14.1 PMDA
- ジクアスLX点眼液3% 2022年6月作成(第1版) 3.1、14.1 PMDA
- ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」 2023年9月作成(第1版) 3.1、14.1 PMDA
- ジクアス点眼液3%の過去の添付文書 2015年7月改訂(第6版)、2015年9月改訂(第7版)。PMDAに掲載されていたPDFの控え(インターネット・アーカイブ)で確かめました
インタビューフォームと、製造販売元の資料です。
- ジクアス点眼液3% インタビューフォーム 2023年3月(第13版)、ジクアスLX点眼液3% インタビューフォーム 2022年11月(第2版)。「製品の製剤学的特性」の項を確かめました
- 参天製薬 医療関係者向けQ&A ジクアス点眼液・ジクアスLX点眼液(2025年8月)、点眼剤全般(2025年10月)
- PMDA 医薬品回収の概要 ジクアスLX点眼液3%(2024年5月21日)
ガイドラインなどです。全部を読んだわけではなく、該当する箇所を確かめました。
- 日本コンタクトレンズ学会 コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版) 日本眼科学会雑誌 118巻7号、2014年 「防腐剤の影響」の項 PDF
- ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会 ドライアイ診療ガイドライン 日本眼科学会雑誌 123巻5号、2019年 CQ19 PDF
コンタクトレンズを使う方での研究です。Ogami 2021 は、公開されている要旨の範囲で確かめました。本文は確かめていません。ほかの3本は、本文を確かめました。
- Nagahara Y, et al. Clin Ophthalmol. 2015;9:1029-1031. PubMed
- Yamaguchi M, et al. Clin Ophthalmol. 2015;9:2251-2256. PubMed
- Ogami T, et al. Adv Ther. 2021;38:5534-5547. PubMed
- Itokawa T, et al. Jpn J Ophthalmol. 2025;69(2):308-315. PubMed
添加剤についての研究です。Hori 2022 は本文を、ほかの3本は要旨の範囲で確かめました。
- Plaut BS, et al. J Pharm Pharmacol. 1980;32:453-459. PubMed
- Burstein NL. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1980;19:308-313. PubMed
- Fukuda M, et al. Cutan Ocul Toxicol. 2025;44:536-543. PubMed
- Hori Y, et al. Adv Ther. 2022;39(8):3654-3667. PubMed
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