花粉症の時期は、アレルギーの目薬をお渡しすることが増えます。コンタクトレンズを使っている方に、つけたまま点眼してよいかを伝えるとき、私は、防腐剤が入っているかどうかで判断してきました。
アレジオンLX点眼液は、つけたままでよい。フルメトロン点眼液は、外す。そう伝えています。この考え方は、先輩の薬剤師や、製薬会社の説明から覚えました。
前の記事でジクアスとコンタクトレンズを調べたとき、この考え方そのものを確かめたくなりました。
この記事の結論
- 「防腐剤が入っていなければ、つけたままでよい」と言い切った資料は、今回確かめた範囲では見つけられませんでした
- 製造販売元の答えは、製品ごとに違います。防腐剤が入っていないクラビット点眼液は、ソフトコンタクトレンズをつけたままの点眼を避ける、とされています
- フルメトロン点眼液を外す理由は、防腐剤だけではありません。製造販売元は、懸濁性の点眼液であることを理由に挙げています
- 防腐剤のほかに、治療している病気、薬の成分と点眼液の種類、その製品で確かめられているか、レンズの種類を見ます
この記事に出てくる会話は、説明のために構成したものです。
4つの製品で確かめる

防腐剤が入っているかどうかで、つけたままでよいかが決まるのですか?

防腐剤が入っているかどうかと、製造販売元のQ&Aの答えを、4つの製品で並べてみます。防腐剤だけでは決まっていないことが分かります。
| 製品 | 防腐剤(保存剤) | 製造販売元のQ&A |
|---|---|---|
| アレジオンLX点眼液0.1% | 含有しない(インタビューフォーム) | 条件つきで、装用中の点眼は可能と考える |
| ヒアレインミニ点眼液 | 含有しない(添付文書) | 条件つきで、装用したままの点眼は可能 |
| クラビット点眼液 | 含んでいない(製造販売元のQ&A) | ソフトコンタクトレンズをつけたままの点眼は避ける |
| フルメトロン点眼液 | 添加剤にベンザルコニウム塩化物(添付文書) | ハードでもソフトでも、外して点眼することが望まれる |
製造販売元は、4つとも参天製薬です。医療関係者向けのQ&Aで確かめました。かっこの中は、防腐剤について確かめた資料です。
添付文書の「適用上の注意」も確かめました。4つとも、コンタクトレンズをつけたままの点眼についての注意は、書かれていませんでした。

4つとも、添付文書の注意には、コンタクトレンズのことが書かれていないんですね。

そうです。添付文書に書かれていないことと、つけたままでよいことは、別です。防腐剤が入っていない3つの製品でも、Q&Aの答えは分かれています。
防腐剤が入っていなくても、避けるとされる製品

クラビット点眼液は、防腐剤が入っていないのに、なぜ避けるのですか?

参天製薬のQ&A(2026年1月)に、ちょうど同じ質問があります。「防腐剤非含有なので、ソフトコンタクトレンズに及ぼす影響がないと考えてよいですか」という質問です。答えは、次のとおりです。
- 防腐剤は含んでいないが、主薬などがソフトコンタクトレンズの中にとどまり、レンズなどへ影響を与える可能性がある。材質の面からも、ソフトコンタクトレンズをつけたままの点眼は避ける
- クラビット点眼液を使う細菌性の眼の感染症では、コンタクトレンズの装用が、治療の妨げになる可能性もある
- 装用中に点眼してよいかは、一概に決められない。眼の状態などを踏まえて、患者さんごとに判断する
- 原則として、ハードでもソフトでも、外して点眼し、少なくとも5〜10分あけてつけ直すことが望まれる
理由は2つです。薬の成分そのものがレンズにとどまる可能性と、治療している病気です。どちらも、防腐剤とは別の話です。
ここまでは、クラビット点眼液についてのQ&Aです。レボフロキサシン点眼液の後発品について、製造販売元が装用中の点眼をどう考えているかは、今回は確かめていません。使う製品ごとに、添付文書や製造販売元の情報を確かめます。
薬の成分がレンズにつくことは、添付文書に書かれている製品もあります。ムコスタ点眼液UD2%は、保存剤を含まない1回使い切りの製品です。添付文書には、「有効成分はソフトコンタクトレンズに吸着することがあるので、目に違和感を感じたときは眼科医に相談すること」と書かれています。
防腐剤が入っていない製品の「可能」にも、条件がある

アレジオンLX点眼液とヒアレインミニ点眼液は、つけたままでよいのですね。

「防腐剤が入っていないから、よい」とは書かれていません。どちらのQ&Aも、条件と理由を挙げています。
アレジオンLX点眼液(2025年6月のQ&A)
- アレルギー性結膜炎の治療中は、コンタクトレンズの装用は中止を考慮することが原則
- つけたまま点眼治療を行っても問題ないと考えられる患者さんでは、ハードでも、使い捨てを含むソフトでも、装用中の点眼は可能と考える
- 理由は、試験管の中での試験(in vitro)の結果と、臨床での使用経験
- カラーコンタクトレンズは、影響を検討していないので、装用中の点眼は避ける
ヒアレインミニ点眼液(2025年12月のQ&A)
- 治療期間中は、コンタクトレンズの装用を中止することが原則
- つけたまま点眼治療を行っても問題ないと考えられる患者さんでは、装用したままの点眼は可能。カラーコンタクトレンズは除く
- 理由は3つ。保存剤を配合していないこと、レンズを液にひたす試験でソフトコンタクトレンズの物性に影響しなかったこと、コンタクトレンズを使う方を対象にした臨床試験の結果を踏まえて承認されたこと
同じ回答には、ヒアレインミニ点眼液の保険請求の対象についての注意も書かれています。この記事では扱いません。

防腐剤が入っていないことは、理由の1つで、それだけではないんですね。
フルメトロン点眼液を外す理由は、防腐剤だけではない

フルメトロン点眼液は、ベンザルコニウム塩化物が入っているから外す、と考えてよいですか?

参天製薬のQ&A(2026年6月)は、別の理由を挙げています。フルメトロン点眼液は、懸濁性の点眼液です。懸濁した粒子を含む点眼液では、主薬や添加剤のレンズへの影響だけでなく、粒子の眼の中での動きや、角膜やレンズへの機械的な影響も考える必要がある、とされています。これらについて、十分な検討を行っていない、とも書かれています。
同じ会社の、点眼剤全般についてのQ&A(2025年10月)にも、点眼したあとにゲルになる製剤と、懸濁性の点眼液は、どのレンズでも外して点眼する、と書かれています。
防腐剤は、なぜいけないとされるのか

そもそも、防腐剤はなぜいけないとされているのですか?

参天製薬の点眼剤全般についてのQ&Aは、次のように説明しています。ソフトコンタクトレンズでは、主薬や防腐剤などがレンズの中にとどまると考えられる。とくに防腐剤は、レンズの中での濃度が高くなると、レンズの変形や着色、角膜や結膜の上皮の障害を起こす可能性が危惧されている、というものです。
もとになる研究を、2本確かめました。どちらも要旨の範囲です。
- Chapman 1990:ソフトコンタクトレンズを、ベンザルコニウム塩化物に7日間さらし続けた実験です。レンズに多く取り込まれ、24時間洗っても、出てくるのは取り込んだ量の0.2〜1.5%でした。水分の多いレンズほど、多く取り込みました
- Christensen 1998:23人で、ベンザルコニウム塩化物を含む点眼液を使った試験です。レンズをつけたまま点眼すると、レンズ1枚あたり0.9マイクログラムのベンザルコニウム塩化物が取り出されました。レンズを5分間外した場合(外して点眼し、5分待ってつけ直すことを確かめる試験です)は、検出されませんでした

1本めは、7日間さらし続けた実験で、ふだんの点眼の条件とは違います。2本めは、瞳孔の大きさの変化と、レンズから取り出されたベンザルコニウム塩化物の量を調べています。要旨には、角膜の障害を評価したという記載はありません。Q&Aの書き方も、「可能性が危惧されている」です。
「防腐剤が入っていなければよい」に近い資料

防腐剤が入っていなければよい、と書いた資料は、ないのですか?

言い切った資料は、今回確かめた範囲では見つけられませんでした。近い書き方の資料は、2つありました。
日本眼科医会の一般向けのページ
- 基本的には、目薬はコンタクトレンズを外した状態でさすべきもの、としています
- レンズの上からさす場合は、防腐剤が入っていない目薬や、塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤が入っている目薬を使う、としています
- これは、コンタクトレンズによるドライアイに使う場合の話、としています。眼科で目の病気を目薬で治療中の方は、そもそも装用を避ける、としています
厚生労働省の登録販売者試験の手引き(令和8年4月。市販薬についての資料)
- コンタクトレンズをしたままの点眼は、ソフトでもハードでも、添付文書に使用可能と記載されていない限り行うべきでない、としています
- 1回使い切りで防腐剤を含まない製品では、ソフトコンタクトレンズ装着時にも使用できるものがある、としています
どちらも、「防腐剤が入っていない製品はどれでもよい」という書き方ではありません。
窓口で確かめること
今回の資料から、防腐剤のほかに確かめることを、4つにまとめます。
- 治療している病気。製造販売元のQ&Aは、アレルギー性結膜炎でも、治療中は装用の中止を考慮することが原則、としています。感染症では、装用が治療の妨げになる可能性がある、とされています
- 薬の成分と、点眼液の種類。防腐剤が入っていなくても、成分がレンズにとどまる可能性がある、とされる製品があります。懸濁性の点眼液は、外すとされています
- その製品で、確かめられているか。製造販売元のQ&Aを、製品ごとに確かめます
- レンズの種類。今回確かめたQ&Aでは、カラーコンタクトレンズは、装用中の点眼を避ける、とされていました

私の場合
資料に書いてあることと分けて、私自身のことを書きます。
アレジオンLX点眼液はつけたままでよい、フルメトロン点眼液は外す。私が伝えてきたこの2つを、製造販売元のQ&Aと照らしました。アレジオンLX点眼液は「可能と考える」、フルメトロン点眼液は「外して点眼することが望まれる」で、向きは同じでした。一方で、アレジオンLX点眼液には条件が付いていて、フルメトロン点眼液には、防腐剤とは別の理由が挙げられていました。
クラビット点眼液とヒアレインミニ点眼液のことは、意外でした。知りませんでした。
これからは、防腐剤が入っているかどうかに加えて、その製品の製造販売元のQ&Aも確かめてから、お伝えするつもりです。
まとめ
明日の窓口で使えること
- 「防腐剤が入っていなければ、つけたままでよい」と言い切った資料は、今回確かめた範囲では見つけられなかった
- 防腐剤が入っていないクラビット点眼液は、ソフトコンタクトレンズをつけたままの点眼を避ける、とされている。理由は、成分がレンズにとどまる可能性と、感染症の治療であること
- アレジオンLX点眼液とヒアレインミニ点眼液の「可能」は、つけたままの点眼治療に問題がないと考えられる患者さんが対象。治療中は、アレジオンLX点眼液では装用の中止を考慮すること、ヒアレインミニ点眼液では装用を中止することが原則。どちらも、カラーコンタクトレンズは除かれる
- フルメトロン点眼液を外す理由として、製造販売元は、懸濁性の点眼液であることを挙げている
- 添付文書に記載がなくても、製造販売元のQ&Aに書かれていることがある
出典
情報を確かめた日は、2026年10月13日です。
添付文書は、PMDAに掲載されている電子添文で、3.1(組成)と14(適用上の注意)を確かめました。アレジオンLX点眼液は、インタビューフォームの「製品の製剤学的特性」も確かめました。
- アレジオンLX点眼液0.1% 2019年9月作成(第1版) PMDA
- アレジオンLX点眼液0.1% 医薬品インタビューフォーム 2023年7月(第4版) Ⅰ-3 製品の製剤学的特性(本文2ページ) PMDAの資料一覧
- ヒアレイン点眼液・ヒアレインミニ点眼液 2022年7月改訂(第1版) PMDA
- クラビット点眼液0.5% 2020年12月改訂(第1版) PMDA
- クラビット点眼液1.5% 2020年12月改訂(第1版) PMDA
- フルメトロン点眼液0.02%・0.1% 2023年2月改訂(第1版) PMDA
- ムコスタ点眼液UD2% 2023年3月改訂(第1版) PMDA
製造販売元のQ&Aです。参天製薬の医療関係者向けのページで、「コンタクトレンズを装用したまま使用してもよいですか」の項目を確かめました。
学会・公的機関の資料です。全部を読んだわけではなく、該当する箇所を確かめました。
- 日本眼科医会 目についての健康情報「防ごう目のトラブル!!コンタクトレンズの眼合併症」 「コンタクトレンズの上から目薬をさしても良いの?」の項 ページ
- 厚生労働省 登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂) 第3章 眼科用薬「コンタクトレンズ使用時の点眼法」 厚生労働省のページ
論文は、公開されている要旨の範囲で確かめました。本文は確かめていません。
- Chapman JM, et al. Arch Ophthalmol. 1990;108(2):244-246. PubMed
- Christensen MT, et al. CLAO J. 1998;24(4):227-231. PubMed
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